カーレビュー

 THE HISTORYでも触れたように、ディフェンダーはホイールベースの数値がそのままモデル名となるのが伝統だ。今回販売されるのは110SWだから、110インチのホイールベースを持つクルマということになる。本国では、ピックアップトラック(PU)や後席を取り去り荷室としたハードトップ(HT)と呼ばれる3ドア版なども用意されているが、上陸するのは後席を持つ5ドアのステーションワゴン(SW)である。

 さっそく2010年モデル110SWの特徴を紹介していこう。ひと目でディフェンダーと判る飾り気のまったくない全体のプロファイルは80年代からほとんど変更されていないものの、フリークの方は写真を見てボンネットが微妙に盛り上がっていることにお気付きだろう。これはもちろん迫力を増すための飾りではなく、新しく採用されたフォード製の2.4リッター直4ディーゼル・ターボを収めるための処理。新ユニットは37.0mkgの最大トルクを2000rpmで発生する柔軟さが真骨頂だ。「ディフェンダーは運転がたいへんそうだし喧しい」というイメージを持つ方も多いけれど、この高性能ターボが装着されたエンジンなら街中を普通に流せるし、高速も快適にクルーズできる。ただし、悪路の走破性やボディとメカニズムの頑丈さは世界のトップレベルにあることを忘れてはならない。各国の軍隊が採用するほどの実力を持つ4WD車なのだ。

 そして、これまで110SWの後席はコマンドスタイルの対面シートが標準となっていて、とりあえず味わいはあったもののとても快適に過ごせる空間とはいえなかった。でもニューモデルでは一気に近代化が進み、一般的なレイアウトの5座+3列目の2座も備わって立派な7人乗りとなっている。しかも後席のすべては簡単に折り畳むことができるのでシート・アレンジも楽しめるというオマケまで付く。もう後席の住人に我慢を強いることもないだろう。

 ディフェンダーはSUVという言葉が生まれる遙か昔の1948年から、時代に流されることなくコンセプトや基本骨格を変えないまま生き続けてきた超ロングセラーモデルだ。ところが、日本への正規輸入は途絶えたままとなっていたためその魅力が封印されていた。でも、再びその封印が解かれたのだ。ぜひ、正規ディーラーで試乗していただきたい。意外にフレンドリーなクルマであることに驚く方が多いと思う。時を超えてやってきたクラシカルな雰囲気のSUVはまったく古くさくないのである。それどころか、いまの時代にすごく合っている、というか新鮮で、「一緒に暮らすならこんなクルマがいい」と感じるはず。そして、きっとこのクルマのドライバーズシートがあなたの最も落ち着く場所になるだろう。

LAND ROVER DEFENDER 110SW

●形式:LD25 ●エンジン形式:244DT
●全長:4,565mm ●全幅:1,785mm 
●全高:2,070mm ●最低地上高:215mm 
●ホイールベース:2,795mm 
●トレッド 前/後:1,510mm/1,510mm 
●車輌重量:2,040kg ●乗車定員:5名/7名
●排気量:2,402cc ●圧縮比:17.5:1 
●最高出力:90kw(122ps)/3,500rpm 
●最大トルク:360Nm(36.7kg)/2,000rpm
●トランスミッション:副変速機構付6速MT
●使用燃料:軽油 
●ボア×ストローク:89.9mm×94.6mm 
●ブレーキ形式:F:ベンチレーデッドディスク/R:ソリッドディスク/F:4ピストンキャリパー/R:2ピストンキャリパー 
●タイヤサイズ:F/R 235/85R16 
●ホイールサイズ:F/R 7.0J 16