選ばれし者だけが手にできる真の高級車「マイバッハ」を、中古車で手に入れるというアプローチに注目してみたい。東京コンクール・デレガンスの開催に合わせて今夏に日本で発表された新型マイバッハの登場と歩みを共にして、2002年から導入された初代モデルの動きが盛んになっている。
 とはいっても、日本に存在するマイバッハの数はおよそ150台と決して多くはない。乗り出しで5000万円を超える新車価格はもちろん、日本の駐車場の多くを拒絶するような堂々としたボディサイズや、他人の目を気にすることから解放された社会的地位など、多くのハードルがそびえ立つからだ。だからこそマイバッハは“選ばれし者”だけが手にできる存在なのである。

 事実、マイバッハはドライバー付きの送迎車として、いわゆる法人需要が目立つという。ロングホイールベースの62の新車販売数が多いというのがなによりその証拠だ。だが、中には積極的にステアリングを握るパーソナル・ユースとして活用する人もいる。ここで推進したいのはまさにそんな使い方。オーナードライブカーとしてのマイバッハである。

 マイバッハはメルセデス・ベンツのサーティファイドカーのような認定中古車制度が整っているわけではない。だが、インポーターが正式に認め、相応の品質を約束する中古車は存在する。例えばこの個体、メルセデス・ベンツ品川で出会ったマイバッハ57Sである。元はインポーターのデモカーとして活躍し、モデルチェンジに伴ってその役目を終えて中古車として店頭に並んだ。 メルセデス・ベンツ品川は、マイバッハ専任のセールススタッフ(パーソナル・リエゾン・マネージャー/日本に二人のみ)のほか、大型リフトや専用工具などのインフラを整える万全の体制でマイバッハを迎え入れる。同店は2007年からマイバッハの販売代理店を務めており、新車はインポーター直販のほか同店でしか購入できず、中古車になるとここしかない。真の高級車は、それを供給する場所も限られている。

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マイバッハはステアリング位置を左右選べるが、この個体は左。操作系の多くはメルセデス流儀が踏襲されているため違和感はない。走行距離5000kmのこの個体はシートやステアリングに使用感もなく新車そのものだ。

ショートホイールベースの57Sとはいえ、全長5734mmでホイールベースは3390mm、さすがに後席は広々としている。ベスビオブラックの本革シートの感触も抜群。前席背面には左右それぞれに液晶モニターが備わる。

ダッシュボード、トリム類の仕立てにはカーボンが用いられるが、これは57、62ともに“S”だけに用意される装飾。フォーマルな中に見え隠れするスポーティな装いがオーナードライブカーとしての使い方によく似合う。

 

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