2011年、日本におけるマイバッハとSLRの歩みに大きな変化があった。といっても新型モデルがどうこうという話ではない。SLRは既に生産を終了し、マイバッハも昨年の段階で新型に切り替わったいま、なにが変わったのか。

 それはこの特殊なモデル達のサービス体制の変化である。これらは大柄なボディを始め、贅を尽くした特別な造りを持つため、一般のサービス工場であっても手を出すのは難しい。たとえメルセデスの正規ディーラーであってもだ。

 そこでこの2車は、日本導入から長らく専門のサービスセンターとサポートセンターが置かれていて、そこで整備・修理がおこなわれてきた。本格的な重整備にまで対応するサービスセンターは全国に2拠点、メーカー指定点検や車検、その他のメンテナンスをおこなうサポートセンターが全国に4拠点。これらの施設が、日本のマイバッハ、SLRを影で支えてきたのである。

 その基本体制はいまも不変ながら、今年になってそれらの要にあったマイバッハ・SLRサービスセンター東京が、インポーターであるメルセデス・ベンツ日本から2車の販売代理店を務めるメルセデス・ベンツ品川に譲渡された。これが冒頭にある“変化”を差す。メルセデス・ベンツ品川自体がもともとマイバッハ・SLRサービスセンター品川として機能するので、事実上、彼らが唯一無二の存在として、今後はマイバッハとSLRを支えていく。

 マイバッハ・SLRサービスセンター東京の譲渡を受けた彼らは、このたび同センターを我々に惜しげもなく公開してくれた。それは2車を診るのに相応しい、最新鋭かつ特殊なインフラが整い、重厚な雰囲気に包まれた空間だった。

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サービスセンターのファクトリーは床張りのフロアに大型リフトが並ぶ。大柄なマイバッハやカーボンボディのSLRを安全かつ確実に持ち上げるため万全のインフラが整う。隅々まで整理整頓が行き届いていて厳粛な空気が漂っている。

専用テスターを始め、2車に用意される特殊工具は数知れず。専用インフラのみならず、それを扱いこなすメカニック達も本国で研修を受けた者がばかりだ。サービスセンターのみに配布される専用マニュアルもたくさんあるという。

日本の路上を走るマイバッハは、多くがこのサービスセンターで整備を受けたもの。法人需要が多いマイバッハは年間数万km、数年で10万km以上を走りきる個体も少なくなく、それらを診てきた彼らは膨大なノウハウ蓄積がある。

 

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