“駆けぬける歓び”を標榜するBMWのなかで、もっとも小さなスポーツカーがこのBMW135iだ。M3はV8になりM5がV10になるなど、時が経つに従って大型グランツースモ化する傾向にあったBMW流スポーツのなかで、小粒でピリリと引き締まる希有なコンパクトスポーツとして存在する。 エコやダウンサイジングが求められる時代である。スポーツカーと言えどもガソリンを湯水のように使い、狭い日本を我が物顔で占拠していいはずがない。今回のテーマはコンパクトスポーツの最高峰、BMW135iとしたい。

 コンパクトと言っても135iのサイズ感は、ちょうどE36時代のM3のようだ。全長以外はむしろ135iのほうが大きい。エンジンも3.0Lのストレート6だからE36とほぼ同じボリュームで、直噴+ツインターボの最新技術が搭載される。昔ながらのサイズ感を求める人にとっては狙い目だと思うのである。 現行モデルなので新車という選択肢がまず浮かぶ。が、発売から既に3年あまりが経過したいま、注目すべきは認定中古車である。BMWの認定中古車はプレミアム・セレクションを筆頭に、アプルーブドカー、ユーズドカーと区別される。その中でも主流は初年度登録から5年以内、走行距離6万km以内の個体を基本に、さらにいくつのも基準をクリアしたもののみが成し得るプレミアム・セレクションだ。購入後は2年間、走行距離無制限での保証が適応されるから、ユーザーは新車となんら変わらぬ気構えでいられる。当然ながら135iの認定中古車物件も、ほぼ全てがプレミアム・セレクションに該当する。サンプルケースは多くないとはいえ、全国的に物件はチラホラと出てくるようになってきた。今回は、常時150台前後の在庫を持つ株式会社モトーレン東名横浜の中で、もっとも大きな展示場を持つ「BMW Premium Selection横浜山下公園」にあった135iクーペ M-Sportを取り上げる。

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基本的にはハッチバックの1シリーズと共通の内装意匠。だが安っぽさは微塵もなくBMWらしさに溢れている。この個体は2008年式だが、最新型との差はナビ(i-Drive)のバージョン程度となる。正規輸入車は全て右ハンドルだ。

長時間ドライブを苦にしないシートを覆うのは真っ赤なコーラルレッドレザー。2年以上という時間を感じさせない張りと艶を保っていた。全国的に見てもクーペ+赤内装は極めて稀で、新車オーダーしたら納車まで半年近くかかるとか。

2ペダルが主流の昨今でも「スポーツドライビングには3ペダルを」という人は決して少なくない。この個体はまさにうってつけの6速MTモデルだ。節度感のあるシフトフィールとぶ厚いトルクでとても乗りやすいMTなのが特徴。

 

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