メルセデス・ベンツSクラスは、アッパーサルーンの中では定番中の定番だ。世界中のどの自動車メーカーも、Sクラスを基準に「よりスポーティに、よりフォーマルに、よりゴージャスに」と己のモデルを設えるところがある。だが、定番はいつの時代も威風堂々たる姿勢でど真ん中をひた走る。

 その状況を逆手にとって注目したいのが認定中古車である。メルセデス・ベンツの認定中古車はサーティファイドカーと呼ばれるが、その世界におけるW221型を取り上げてみたい。首都圏屈指の販売店ネットワークを持つ宮園輸入車販売株式会社のサーティファイドカー拠点「メルセデス・ベンツ中野 サーティファイドカーセンター」は、いつも10台前後のSクラスを保有している。彼らの在庫物件を例に挙げて、W221型の今を捉えてみよう。

 目に飛び込んできた目映いカルサイトホワイトのロングボディは、2009年式のS550Lである。5461ccのV8を搭載するグレードで、メルセデス・ベンツの中では伝統的な大排気量+V8のモデルであり、新車での乗り出し価格は1500万円を超えてくるだろう。しかし今年の7月に最初の車検を迎えるこの時期にして、価格は半額以下の698万円だった。

 安いとはいえ程度は抜群である。走行距離は2万7000kmと一般的だが、とても丁寧に使われたようで、内外装含めて傷やヘタリは皆無だ。同店は場合によってはサーティファイドカーにする際に加修などをおこなうが、この個体に関してはその必要性を感じなかったという。700万円前後というのは全国的な相場と合致するが、この内容を見るにバーゲンプライスだと感じる。

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ステアリングコラムに7速化したATのレバーが付き、ステアリングから手を離さずに操作できる。センターコンソールに配されたコマンドコントローラーや全面液晶化されたメーターパネルが未来的。W221型らしい操作系である。

ブラックレザーで統一されるインテリア。一番酷使されるフロントシートを見ても汚れや擦れなどは感じられない。肉厚のシートは長距離移動こそ真価を発揮し「腰痛の人がSクラスを手放せなくなった」と言われるだけのことはある。

全長が標準モデルより130mm長いロングボディのため、さすがに後席の足元はゆったりと足を組める。とはいえ、実際はオーナー自らがステアリングを握ることがほとんどだという。仕事で使っても、ファミリーカーとしても最適だ。

 

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