歴史あるヒストリックモデルは別にして、ロールス・ロイスというと何が何でも新車で買わなければならないような空気がある。だが、BMWの血が加わった新生ロールス・ロイスとなって早10年弱、このタイミングにして新しい選択肢が生まれた。その名も「Provenance(プロビナンス)」。芸術・文学作品などの起源、由来という意味を持つこの言葉は、ロールス・ロイスの認定中古車のことを差す。そう、いよいよ認定中古車の導入である。

 元々、ワールドワイドで構築されるものだが、日本において導入に踏み切ったのは、2009年より正規販売代理店を務めるロールス・ロイス・モーター・カーズ横浜である。名実ともに最高級の自動車であり、伝統工芸品や芸術品とも捉えられるロールス・ロイスのプロビナンスとはいかなるものか。

 そこでプロビナンスの概要をざっと説明する。当然ながら正規販売車両のみに与えられた制度で、初年度登録から8年以内の無事故、無改造車のみがその資格を得る。そうした個体を元に、グッドウッド本社ファクトリーで研修を受けたテクニシャンが徹底した点検と加修を施す。項目は通常の中古車を超越している。走りの水準を高次元に保つ機関部は当然として、塗装やトリムなど“設え”の部分までロールス・ロイス水準に加修されるのである。

 購入後は最低2年間のプロビナンス保証が付く。4年と長いスパンで設けられた新車保証も、然るべき手続きにより継承される。万が一の際には、先述したテクニシャンのお出ましとなる。24時間ワールドワイドアシスタンスと名付けられたシステムにより、いかなる場合も積載車により彼らの元へと届けられるから、全国どこにいても心配は要らない。この保証期間にしても、あるいはプロビナンスになり得る基準にしても、ロールス・ロイスは明確な距離制限を設けていないところにも注目したい。走行距離に依存しない強靱なつくりを持つ自信の裏打ちなのだと感じる。

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往年のロールス・ロイスの運転様式や雰囲気を巧みに残しながらモダンに設えられた操作系である。素材、デザインはもちろん数字の書体ひとつ取っても全てがロールス・ロイスらしい。この個体に使用感は皆無で新車そのものだった。

シートカラーを始めインテリアは白基調(シーシェル)となる。肉厚の厚いシートは乗り心地抜群。長距離をものともしない快適性を持つ。後席に座る用途としてだけではなく、積極的にステアリングを握りたくなる動的魅力を持つ。

後席の広さはEWB(ロングホイールベースモデル)でなくとも充分なものだ。プライバシー保護のために、後席の乗員がCピラーによって隠れるという設計は往年のロールス・ロイス譲り。かといって窮屈な感じがしないのもいい。

 

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