ドイツ系のアッパーサルーン、スポーツカーとはひと味もふた味も違う、独特の世界観を持つジャガーを色濃く表すようなスポーツモデルが2台も揃った。ご覧のようにXKRとXFRである。単に“R”であるというだけでも珍しいと思えるが、よく見るとありそうでない希有なパッケージだった。

 まず目に飛び込んできたのはポラリス・ホワイトにブラックフードのソフトトップ、中身はレッド×ブラックで彩られたXKRコンバーチブルである。ジャガーXKシリーズは、マイナーチェンジにより2012年モデルから歴代ジャガー最強モデルたるXKR-Sが登場したのが記憶に新しい。だが、ここ日本では同時にコンバーチブルの“R”がひっそりと姿を消した。XKコンバーチブルは現在、ラグジュアリー性を体現するXKポートフォリオのみ。今回のこの個体は、試験的に導入された異例の1台。それが認定中古車の世界に並んだのだ。

 一見、華やかな造形のなかに無言で主張するボンネットエアスクープや、レッドブレーキキャリパー、そこに“R”のエンブレムが加わる。動力性能を支えるパワーユニットは4999ccのV型8気筒+スーパーチャージャー。最高出力510psはもとより、2000rpmから発生する最大トルク63.7kg-mで、このコンバーチブルをぐいぐい引っ張る。クーペと比べて重量増が懸念されるコンバーチブルだが「クーペとコンバーチブルでの重量差がたったの50kg。剛性面でもまったく遜色がない」と、ジャガーのテストドライバーは言う。“R”を名乗るからにはそこまで走りにこだわる、その姿勢が見え隠れする。

  XKR-Sに使われるレザーを用いた上質かつスポーティな特注シートが装着されるなど特別な仕様で、かつ新車登録からまだ1年未満(2012年2月)、走行距離もまだ2000kmにも満たない。なのに価格が1280万円と聞いてさらに驚いた。XKRコンバーチブルは日本では唯一無二の存在だから、新車価格は存在しないものの、マイナーチェンジ前のXKRコンバーチブルの新車価格は1650万円、現行型XKRクーペの新車価格が1530万円ということを考慮すると、この個体はオプション価格および諸費用を含めて1750万円程度になると思われる。希少性を抜きにしてもバーゲンプライスである。

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インパネの基本形状はマイナーチェンジ前と同様だが、ATセレクターがJゲートからダイヤル式に変わった。レッド×チャコールで構成されるスポーツシートはXKR-Sで使われる特注モノ。最上級のソフトグレインレザーである。

装着されるホイールは20インチ「Kalimnos」のブラック。裏側にレッドキャリパーが顔を覗かせるのが“R”モデルの証。タイヤサイズはフロント255/35、リアが285/35。銘柄はダンロップSP SPORT MAXXが装着されていた。

ボンネットグリルサイドやリアにさりげなく装着される“R”のエンブレム。ジャガーのスポーツ魂が色濃く流れるRモデルだ。現行型XKコンバーチブルにはRモデルは正規輸入されない。この個体は異例に導入された希有な1台である。

 

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