メルセデス・ベンツEクラスがどっしり重厚な乗り味を持つ保守派の代表なら、アッパーミドルクラスセダンに軽快でスポーティな走りという新風を吹き込んだ革新派の代表がBMW5シリーズだろう。ただし、エクステリアは1972年にリリースされた初代E12から堅実で落ち着いたデザインが採用されてきた。そのため日本では卓越した動力性能は認められていたものの、華のある3シリーズと7シリーズの狭間で影の薄い存在だった。それは、欧州ではカンパニーカーとして絶大な支持を得ていることの裏返しで、平たく言えばE39まではフォーマルなスーツの似合うクルマに仕立てられていたのである。ところが、2003年8月に上陸を果たした5代目E60で大きく梶を切った。3シリーズにも負けない躍動感のあるスタイリングで、ポロシャツにジーンズで乗っても様になるクルマにイメージチェンジを果たしたのだ。
E60のトピックはもちろんルックスだけではない。iDrive、アクティブ・ステアリング、アダブティブ・ヘッドライト、ランフラット・タイヤなど、それまでは研究段階とされてきた最新の電子デバイスが一挙に投入され、さらにボディやサスペンションにアルミ材を多用することでより軽快な走りに一層の磨きがかけられた。重たいミニバンから乗り替えると、その走りはまるでライトウエイト・スポーツカーのように感じるだろう。
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