最高品質のレザーとそれを丁寧に織り込んだステッチの数々、随所に取り入れられるドライカーボンの質感など、どれをとってもこれが自動車のインテリアとは思えないほど高級感に溢れている。オーナーは各部のカラーリングから素材、それこそ糸の色にいたるまで子細にわたってオーダーできる。何度も本国ファクトリーとCGなどを使って打合せを重ねるのだ。この個体はオーナー氏の好みでダーク系に統一され、落ち着いた印象を持っていた。フルカーボン+マットクリアの外装に似合ったコーディネイトだと思う。
パワートレインは吸排気およびECUアップグレードというもの。ノーマルですら充分以上の動力性能を持つDB9であるうえ、カーボンにより相応の軽量化も果たしているはずで、なかなか痛快な走りを見せるはずだ。もちろん、ホイールやブレーキもマンソリーによってアップグレードされていた。
この個体に代表されるように、マンソリーの基本は内外装全てがオーナーおよびマンソリーの意志を反映させたコンプリートカーである。そしてそのプログラムは、いまや日本でも手に入るようになった。マンソリー本国のほか日本の正規販売店を務めるオートプロジェクトDの企業努力により、本拠地バイエルン州ブラントが隣町にあるような感覚でオーダーできる。先に述べたCGでの通信体勢を始め、自分の意志をマンソリーにぶつける体制は整っている。
マンソリー・サイラスは世界限定15台とアナウンスされたが、こうしたオーダーメイド的カスタマイズは、今後も継続的に行なわれていくという。コンプリートカーの製作は基本的に本国ファクトリーの職人が施すが、例えば外装マテリアルのみといったオーダーには日本での作業も可能だ。フルカーボンの迫力に躊躇するのなら、その上から塗装することもできる。基本はオーダーメイドなのである。もちろん、相応の資金力は必要だろうが、一生モノとして相応しい究極の1台を欲するのなら、ぜひマンソリーの門を叩いてみたい。
TEXT:中三川大地
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