並みのスポーツカーを一瞬で置き去りにする動力性能を有しながら、ファミリーユースをなんなく許容する利便性をも兼ね備えるBMW M3は、現行型になってよりその色合いが濃くなった。とりわけ注目すべきは4ドアセダン(E90型)の登場と、2ペダルMT(M DCTドライブロジック)の採用だろう。研ぎ澄まされた走りへの憧れを抱きつつ、しかし家族のために諦めざるを得なかったという人にとって、セダンのM3は実に魅力的な存在である。

事実、日本においては特にそのようなニーズが存在し、デビューから3年が経過したいまとなっても、E90型M3の人気は高い。それを裏付けるように長らく中古車相場は強気だった。セダンより一足先に登場したクーペは、既に認定中古車の世界でも600万円台前半に突入した個体も珍しくないのに、セダン&M-DCTモデルは、新車と変わらないような価格で流通してきたのだ。

 が、ようやく最近になってセダンの中古車も注目すべき物件がチラホラと登場するようになってきた。セダンの発売は2008年3月、初期の個体が最初の車検を迎える時期でもあるからだ。今回は、最高峰のスポーツセダンとして美味しい時期に差し掛かったBMW M3(E90型)を見てみたい。

 セダン、クーペ問わず現行型M3の認定中古車は、ほぼ全てがプレミアム・セレクションに該当する。プレミアム・セレクションとはBMWの認定中古車のうち、初年度登録から5年、走行距離にして6万km以内の個体のみが該当し、最大100項目に及ぶ入念な納車前点検を始め、購入後2年間、走行距離無制限での保証が適用される。BMWの認定中古車はほかにアプルーブドカー、ユーズドカーが存在するが、中心はこのプレミアム・セレクションとなる。

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デュアルテールパイプがさりげなくM3であることを主張する。通常と3シリーズと同様のトランクルームが備わるので使い勝手は申しぶんない。ボディカラーのアルピンホワイトは、M3に限らず中古車市場では一番人気色だとか。

右ハンドルのM DCTは普段使いには最適だ。パドルシフトが備わるステアリングはスポーティーな印象。この個体のインテリアは黒一色で統一され、時間にして2年半、距離にして2万kmを感じさせない綺麗な状態が保たれていた。

4枚のドアと大人が満足に座れる後部座席を持つM3は、実に貴重なパッケージングだ。フロントは専用のスポーツシートとなる。感触の良いソフトレザーは4色用意されているが、この個体は硬派なブラック。汚れが目立たない。

 

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