ジャガーが新世代へと生まれ変わった、という声を頻繁に耳にする。Sタイプに取って代わったXFシリーズと、X351型へ移行したXJシリーズは、確かに既存のジャガー像を覆すほどの新しさに満ちている。だが、走りの感触や雰囲気、作り込みには、英国スポーツカーを祖とする既存のジャガー像がしっかりと受け継がれている。パワー競争が過激化を増す昨今のミドル、アッパークラスにあって、独特のポジションにいるブランドだと思う。

 今回、注目したのは先のXF、XJと共に歩みながら進化を続けるXKシリーズの、最高峰に位置するXKRだ。名実ともにフラッグシップとなるXKRの認定中古車(プレミア・コレクション)を通して新世代ジャガーの魅力を探ろう。

 目の前に現れたのは、2010年6月に登録された漆黒のXKRである。英国車を取り扱って50年以上、時にジャガーのインポーターを務めたこともあるという新東洋企業株式会社の一拠点、ジャガー横浜にあった個体だ。元々デモカーとして活躍した個体のためか、Rパフォーマンスボディキットやアクティブライティングなど豊富なオプション装備をまとい、普段から丁寧に点検整備されていて程度は極上と言えるものだった。年式を考えると走行距離は少々多くて1.2万kmだが、それを補って余りある魅力がその販売価格である。なんと、999万円というプライスタグが掲げられていたのである。

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ジャガー伝統のATセレクター「Jゲート」は2009年にマイナーチェンジした際にダイヤル式のジャガードライブセレクターに取って代わった。黒を基調にウッドをあしらったインパネはスポーツクーペとしてはシンプルな部類に入る。

スポーツカーというよりは高級サルーンと言わんばかりの、タップリとした肉厚を持ったフロントシート。チャコールレザーのカラーリングは落ち着いた印象で汚れも目立たない。ホールド性はすこぶる良好で長時間ドライブも楽々だ。

リアには2座席設けられているが、エマージェンシー用と割り切ったほうが良さそうだ。とはいえ、バッグやジャケットを気兼ねなく放り込めるのは2シーターにはない利点だ。細部に至るまでレザーが張り巡らされ高級感は満点だ。

 

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