どんなに優れた加速力を持つスポーツカーでも、燃費に優れたハイブリッドカーでも、オーナーがカッコいいと思って所有していなければ積極的に乗る気にはなれないもの。「駐車場に停めてクルマを離れるときに振り返って眺めるようであれば愛している証拠」とはクルマ好きの間でよく言われることだが、けっこう的を射たフレーズだと思う。愛車とオーナーは男女の関係に似ているのかもしれない。とにかくルックスは長くつきあっていくための重要な要素になることは間違いない。で、Dセグメントカー随一の“美形”といえばこのクルマである。C6のコードネームを持つ現行型のアウディA6だ。個性的で押し出しの強いシングルフレームグリルにドキッとし、GTクーペのようなルーフとサイドのエレガントなラインにウットリ、そしてリアの端正なデザインに納得させられる。
スタイリングだけではなくビシッと引き締まった緊張感のある走行フィーリングもA6の真骨頂。V6、V8、スーパーチャージャー付きなどの多彩なエンジンが揃うが、どれもがスムーズな回転フィーリングとトップエンドまで淀みなく吹けあがるシャープさを持ち、そのパワーを受け止めるシャシーやステアリングの剛性感も非常に高い。そして、お馴染みの4WDシステム“クワトロ”は、どんな路面状況でも万全のトラクションを示し、高速での安定した直進性やコーナーから脱出する際には背中を押されるような独特の加速感も味わわせてくれる。いまやクワトロはアウディ製サルーンのアイデンティティと言えるのかもしれない。
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