カーレビュー
 

 E46のコードネームでお馴染みの3代目M3が本国デビューしたのは2000年のこと。翌年、日本に導入されたのはクーペのみ(欧州や北米ではコンバーチブルボディも販売)だが、トランスミッションは6段MTとマニュアル/オートマチック変速モードを備えるシフトパドル付きSMGUが用意された。このモデルの特徴は、見た目も走行感覚もスポーツカーらしさに溢れていること。とにかく、ノーマルではないことを主張するアグレッシブなボディは迫力満点だ。大きく口を開けたエアインテークやクロームメッキのエアアウトレット、さらにフェンダーフレアの上端がボンネットラインまで到達するレーシングカー並みのオーバーフェンダーもハンパなものではない。果たして、E46型M3は好調なセールスを記録。2006年夏までに生産された台数はなんと8万5139台に達したという。ちなみに初代E30型M3は約1万8000台しか生産されなかったのである。

 さて、E46型M3はフリークにとって特別な意味を持つモデルになっているようだ。最新型のE90/92型M3ではついにV8ユニットが採用されたため、ストレートシックス版M3のファイナルとなったからである。ご存じのように“M”はBMWの持つ技術のすべてを投入して、ライバルより速く走ることを使命とするスポーツモデル。つまりE46型M3が搭載するS54型3.2リッターユニットは、最終版・イコール・究極のBMW製直列6気筒とも考えられるわけだ。実際、この高回転型エンジンを「史上最もBMWらしい名機」と評するクルマ好きは多い。特に6000rpmを超えてからの甲高い咆哮とドラマチックな吹けあがりはまさに名機と呼ぶに相応しいもので、レブリミットの8000rpm付近には「硬派なマシーンの感覚」が凝縮されている。

 そして、街中を普通に流せば普通に使える柔軟性を備えているのもS54型ユニットの真骨頂。これもM3の系譜だ。ただし、リアルスポーツカーに負けないハンドリングを実現したことの代償として足はかなり硬い。操っているドライバーにはそれも楽しさの一部ではあるけれど、助手席や後席の住人にはかなりの緊張感を強いることになるはず。デートカーやファミリーカーとしては“落第”かもしれない。でも、20年後の2030年に「M3の血統」なんていう特集が組まれるとするならば、このE46型が「ベストM3」に推挙される可能性が高いだろう。「優等生になったM3なんてつまらない。やっぱり不良じゃなきゃ」と思っている方にお勧めできるモデルだ。