「そこまでやらなくても」、オーナーにそう言わせる「最善か無か」の哲学が凝縮されたメルセデス・ベンツのフラッグシップ・サルーン、Sクラス。いつの時代も自動車の王者となることが宿命とされるLセグメントカーである。
クジラと称されていたW/V140の後継としてW/V220がリリースされたのは1998年。エレガントなクーペ・スタイルのボディ、そしてステアリングを握るものにひとまわり小さいGTクーペを操っているような錯覚を憶えさせるほどの洗練された走り。W/V220でSクラスはショーファーカーからドライバーズカーに大きく舵をを切ったと言っても過言ではないだろう。ジーンズで乗ってもまったく違和感がない、カジュアルな装いがとてもよく似合うLセグメントに進化したのだ。
当初のラインナップはV6のS320、V8のS430/S500/S500ロング。2000年に5.8リッターV12を搭載する最高峰のS600ロングが追加設定されている。どのパワーユニットも、ノイズとバイブレーションは限りなく少なく、力強く且つまったくフリクションを感じさせない滑らかな回転フィールは世界のトップレベルに達していると思って間違いない。また、W/V220で初採用されたエアサス+電子制御式可変ダンパーが提供してくれる乗り心地もSクラスに相応しいもの。ロールの量やスピードを緻密にコントロールしてくれる様はまさに知能を持ったサイボーグのようだ。特に高速道路を走ってみると、ほとんどのドライバーに「これ以上のクルマはない」と感じさせてくれるだろう。
2002年にマイナーチェンジが実施されエクステリアを変更するとともに、S320がS350へ、またS430は4WDの4マチックのみの設定となり、S600ロングには500馬力を叩き出すツインターボ付きの新たなエンジンが与えられた。翌年にS500/S500ロングに7段ATを採用。そして2005年10月に現行型となるW/V221へバトンを渡した。
認定中古車はマイナーチェンジ以降の後期型が主流で、S350からS600ロングまでほとんど価格差がないことがポイント。300万円台中盤の予算で極上モノを探せるだろう。タマ数は減少傾向にあるものの、根気強くチェックしていれば必ず出てくる。S500ロングやS600ロングは特に割安だから出逢えれば幸運と思ったほうがいい。とにかくクルマとしての価値からみて安い! メルセデス・ベンツ認定中古車の大穴モデルだ。
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