メルセデス・ベンツの各クラスのボディをベースとしながら、ファインチューニングを施したハイパワーエンジンや独自に開発したサスペンションなどを搭載するクルマ好き垂涎のコンプリートカー“AMG”。1980年代までは派手なエアロパーツをまとった攻撃的なルックスが特徴だったが、近代AMGはボディにスタイリッシュなアレンジを施しながら大人の雰囲気に仕立てるのが流儀となっている。
さて、まずはCクラス・AMGの変遷を復習しておこう。先陣を切ったのは202のAMG C36だった。1993年にリリースされたこのモデルは280psの3.6リッター直6DOHCが搭載されている。その後、V8SOHCのC43、C55と進化、また1998年にはステーションワゴンのC43Tも上陸を果たした。W203をベースとするC32AMG(3.2リッターV6スーパーチャージャー+5段AT)がデビューしたのは2001年。このときからAMGがメルセデス・ベンツのカタログ・モデルとして加わったため、名称はC32 AMGとなっている。
そして、Cクラス・AMGの5代目として登場したのがC55AMGだ。AMG社が203のコンパクトなエンジンベイに押し込んだのは367ps・52.0mkgのパワーとトルクを叩き出す5.5リッターV8SOHC。第一級の動力性能を持つことはもちろんのこと、普段使いもこなす扱いやすさを持つのがC55AMGの真骨頂。インテリアにも最高級のナッパレザーとウッドを装着して一段と高級感を高めている。つまり、200km/hの高速巡航を軽々とこなす実力を持ちながら、街中では高級サルーンとして使える懐の深いクルマに仕立てられているのだ。
C55AMGの後継モデルとしてC63AMGが上陸したのは2007年10月のこと。搭載するエンジンはついに6.2リッターV8DOHC! この歴代最強ユニットはS63AMGに積まれるものと基本的には同じで、C63AMGの場合は457psのパワーに「抑えられた」という表現が相応しいだろう。つまり、そのまま積むとあまりにも過激な性格になるためデチューンされたことが容易に想像できる。ただし、車重を考えれば鋭い牙を持っていることに間違いはなく、パワーウェイト・レシオはレシングカー並み。また、トランスミッションも7Gトロニック・ベースのAMGスピードシフト・プラスとなっている。ところが、近代AMGの流儀に則って普段使いできるのがこのコンプリートカーのすごいところ。荒々しさとは無縁。というか、250km/h付近でも平穏に高速巡航が楽しめるのだ。もしかすると、C63AMGはサルーンにおける究極の「かたち」なのかもしれない。
|