カーレビュー

 もはやチューナーが顧客のために少量生産する特別なコンプリートカーではなく、メルセデス・ベンツの正式なモデルとしてラインナップに加わるAMG。いまでは各クラスのイメージリーダーの役を担っていると言っても過言ではないだろう。2002年6月にリリースされたW211のE55AMGも新世代AMGの文法に則って、前後バンパーやサイドスカートの専用エアロキットに派手さはなく都会的で控えめなデザインを採用、インテリアもスポーティさより高級感を高める方向で仕立てられている。

 搭載されるパワーユニットはSL55やS55でお馴染みの5.5リッターV8スーパーチャージャー。組み合わされるトランスミッションはAMGステアリングシフトが付く5段ATだ。またE500と同様のエアサス+電子制御ダンパーも装着される。

 強大なパワーとトルクを誇るE55AMGだが、街中や高速道路を大人しく走らせてもまったく神経質なところはなく普段使いも難なくこなす。ただし、伝統の鋭い牙は健在。アクセルペダルを踏み込めばフリクションなくレブリミットまで吹けあがり、とにかくその加速は強烈で間違いなく速い。トランスミッションが瞬時に次々とギアを切り替える様は迫力だ。0-100km/hの加速は当時のAMGラインナップでは最速の4.7秒を叩き出すのである。ともあれフル加速しているときもドライバーに過度な恐怖心を与えないのがE55AMGの真骨頂。各パーツが確実にいい仕事をしてくれているのが乗り手に伝わり安心感を与えるのだ。

 そして2006年、Eクラスのマイナーチェンジに合わせ、自然吸気の6.2リッターV8を積むE63AMGにスイッチ。ついに最高出力は500馬力を超えたが、安全快適に飛ばせるスーパーセダンという方向性はもちろん継承されている。ちなみにW212のE63AMGは2009年8月にリリースされた。

 さて、W211のAMGは、最近になり割安感が出てきたため認定中古車の人気が高まっている。E55AMGが500万円台、E63AMGは700万円台後半-900万円付近が目安になる。ただし新車価格が軽く1000万円を超えていただけにサーティファイドカーは非常に少ない。AMGは全国でも数軒のサーティファイドカーセンターに集まる傾向にあるから、まずはそこから攻めてみるのがいいだろう。

E55 AMG

●全長×全幅×全高:4850×1820×1430mm ●ホイールベース:2855mm ●車両重量:1910kg ●エンジン形式:V型8気筒SOHCスーパーチャージャー、5438cc ●最高出力:476ps/6100rpm ●最大トルク:71.4mkg/2650-4000rpm ●変速機:5段AT ●駆動方式:後輪駆動 ●タイヤサイズ:前245/40R18、後265/35R18

E63 AMG

●全長×全幅×全高:4880×1820×1465mm ●ホイールベース:2855mm ●車両重量:1920kg ●エンジン形式:V型8気筒DOHC、6208cc ●最高出力:514ps/6800rpm ●最大トルク:64.2mkg/5200rpm ●変速機:7段AT ●駆動方式:後輪駆動 ●タイヤサイズ:前245/40R18、後265/35R18